Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
 「笑ってごめんな。」

 そう言う雨宮の目はまだ笑っている。
 千紗子は、からかわれたくらいで上司に文句をいうことなんて出来ないと思い、目を逸らして口を噤んだ。

 「そんなにむくれないで、千紗子。可愛すぎるて困るから。」

 一瞬何を言われたのか分からなかった。

 (空耳?今『可愛い』とか言いませんでしたか?)

 「ちゃんと可愛いって言ったぞ。」

 びっくりして顔を上げると、上機嫌な顔でニコニコしている雨宮と目が合った。
 
 (今、私声に出してた?)

 「声に出して喋ったか、考えてるだろ。」

 頭の中にある言葉を言い当てられて、千紗子は目を丸くした。

 「どうして…」

 「考えてることが分かるかって?」

 自分が問いかけようとした言葉を雨宮に全部言われて、千紗子は頷いた。
 
 それを見た雨宮は、「ふっ」と息を吐くように小さく笑って、千紗子の頬に手を添える。

 「そうだな。千紗子は自分の思っていることをあまり言葉にしない。けど、見る人が見ればすぐに分かる。千紗子の瞳はその口よりも雄弁だからな。」

 千紗子の頬に添えられた手の親指が、彼女の唇をそっとなぞった。
 さっきまで可笑しそうに笑っていた雨宮の瞳に、熱が灯る。
< 46 / 318 >

この作品をシェア

pagetop