Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
 雨宮の両手に顔を挟まれて、上を向かされたまま、千紗子はわんわんと子どものように泣きじゃくった。
 目からは次々と涙が溢れ、頬を滝のように流れ落ちていく。
 彼女の頬を包む雨宮の手も濡れるけれど、それを気にすることも出来ないくらいに、千紗子は大声を上げて泣き喚いた。

 「裕也のうそつき…ひどい、ひどいよ…私たち結婚するって…ずっと一緒だって言ったのに……」

 涙と一緒に次から次へと想いが言葉となってこぼれ落ちる。

 雨宮は何も言わずに千紗子の額に唇を寄せた。

 
 号泣がすすり泣きに変わった頃、泣き疲れた千紗子を自分の胸に抱いた雨宮が、彼女の頭を撫でながらそっと耳元で囁いた。

 「俺は千紗子の笑った顔が好きだ。君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいいくらいに。だから今みたいに辛そうな君は見ていられない。俺のこと、利用しただなんて悔いる必要はないんだよ、千紗子。」

 落ち着いたバリトンボイスが、柔らかな口調でそう告げる。
  
 どこかで聞いたその言葉に、千紗子は自分の記憶を手繰り寄せる。
  
 (どこかで…わりと最近…そうだ、あれは昨日美香さんと雨宮さんと三人で飲んでた時。)
 
 『俺は彼女が幸せそうに笑っている顔が好きだから、それを壊したくない。』

 寂しげにそう言っていた彼の片思いの相手が、まさか自分だったとは、あの時の千紗子には思いもよらなかった。
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