Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
 「後悔なんて、していません。」

 千紗子は小さく、けれどはっきりと口に出してそう言った。
 千紗子の言葉に、雨宮は目を見張る。

 「私が…私が自分で望んだことです。雨宮さんはそれを聞き入れてくれただけ。だから雨宮さんに怒ったりもしません。」

 「千紗子……」

 「わたし、雨宮さんを利用したんです。辛さから逃げる為に、あなたを使った……謝るのはわたしの方なんです…」

 千紗子の開かれた双眸から、大きな雫がポロポロとこぼれ落ちる。
 
 「千紗子っ」

 雨宮の両腕が千紗子を勢いよく抱き寄せた。
 千紗子の頭を囲い込むように抱きしめた腕に力がこもる。

 「千紗子は悪くない。君に好意を寄せている俺には絶好の機会だったんだ。」

 苦いものを噛んだような声色が、千紗子の頭の上から聞こえる。
 こぼれた涙が、彼の胸元に吸い込まれていく。
 千紗子は彼の腕の中で小さく頭を振った。

 「いいえ…ゆうべ雨宮さんがいてくれなかったら、きっと今ごろ、正気ではいられなかった…わたしっ。」

 嗚咽が込み上げて、グッと息を飲みこんだ。
 
 「いいんだ。泣いていいんだよ、千紗子。俺の前では強がらなくていい。」

 優しく頭を撫でられて、こらえていたものが抑えきれそうになくて、背中がぶるっと震えた。

 雨宮は千紗子を囲っていた腕をそっと解くと、両手で彼女の頬を包み込んで上を向かせる。

 「我慢しない。ほら、いいから。」

 そう言って、促すように千紗子のまなじりを唇で辿った。

 その瞬間、千紗子の何かがプツリと切れた。 
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