Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
「遅くなったけど、朝食にしよう。こっちにおいで、千紗子。」
ドライヤーを棚の上に置きながら、雨宮は千紗子をダイニングテーブルの方へと呼んだ。
ソファーの背を回ってダイニングスペースに行く。
「そこ、適当に座ってて。」
ソファーと同素材のダイニングチェアを引いて腰を下ろそうとした時、対面式のキッチンの向こうで雨宮が戸棚から食器を出している後姿が見えた。
「運びます。」
「ありがとう。じゃあ頼むよ。」
雨宮がキッチンカウンターにパンの乗った大皿と、取り分け用のプレートを置く。
千紗子がそれらをダイニングテーブルに運んだところで、両手にマグカップを持った雨宮がこちらにやってきた。
コーヒーのよい匂いがふわっと香る。
「コーヒーにはミルクだけで良かったか?」
「はい。なんでそれを?」
雨宮と二人でコーヒーを飲んだ記憶なんてない。
千紗子はどうして彼が自分の好みを知っているのか疑問に思った。
「よく休憩室で河崎と飲んでるだろ?いつだったか自動販売機の前で話しているのを聞いたことがあったから。」
ちょっと言い訳のように感じてしまうのは、彼の自分に対する気持ちを知ってしまったからだろうか。
千紗子は素直に「ありがとうございます。」とミルク入りのコーヒーを受け取った。
「パンは、さっき一階のブランジェリーで買って来たんだ。良かったらどうぞ。」
焼き立てと思われるパンからは香ばしい匂いが漂ってくる。
(さっきって、私がシャワーしている間かしら…)
正直空腹も感じていないし、何か食べたいとも思えない。
けれど、雨宮がわざわざ自分の為に買ってきてくれたものに手を付けないのも失礼な気がして、千紗子は迷いながらも皿の中で一番小さなパンに手を伸ばした。