命の記憶
 ふと昨日のことを思い出す。

「私、こうちゃんが好き──」

 何も無い天井に向かって1人呟く。

 多分、初めてあったあの日。

 逆上がりを教えてくれたあの日から好きだった。

 見ず知らずの女の子に逆上がりを教えてくれたことが。

 私の手に豆をできた時、少し慌てた姿も。

 帰りにまたねと次に会う約束をしたくれたこと。

 昔は悲しかったけど、たくさん友達がいることも。

 最近偶然公園で声をかけてくれたこと。

 思っていたより頭がいいところも。

 こうちゃんの笑った顔が思い浮かぶ。

「来週また会いたいな」

 そう願いながら眠りに落ちた。

 次の日もその次の日も、私は週末にこうちゃんと会えることを楽しみにしながら過ごした。

 もちろん、会う約束はしていないけれど。

 それでもなんとなく会えるんじゃないかと思っていた。
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