命の記憶
 大変な授業も宿題も乗り越え、待ちに待った週末がやってきた。

 いつもより弾んだ気持ちでお母さんの家に向かう。

 しかしお母さんはなんだかいつもよりもよそよそしかった。

 私がウキウキしているせいでそう見えているのかな?

 なんて思ったが、家に入った瞬間、その態度の意味がわかった。

 知らない男の人の靴がある。

 こうちゃんよりも全然大きい、大人の人の靴だ。

 お母さんも私も靴を脱いでその大きな靴の隣に並べる。

 なんだろう。

 何度も来ている家なのに、誰か知らない人がいると思うと全てがいつもとは違う気がした。

「今日はね、ことねに紹介したい人がいるの」

 リビングに入る前、少し照れくさそうに言われる。

 玄関からリビングまでがやけに長い。

 私に心の準備をしろと言うかのようにゆったりしている。
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