24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~

「本日は、担当者の引継ぎの挨拶で参りました。私事ですが、別の事業部へ異動となるため、今後はこちらの飯島拓也が、担当させていただきます」

(……まさか、冗談だろ?)

 立花は、後任として共にやってきた拓也を前に、悪い冗談でも仕掛けられているのかと思った。
 しかし、拓也は前任者がいるからなのか、特段気にする様子もない。


「はじめまして。立花さんのご評判は、かねがねお聞きしております」

 傷つけた以前の恋人が、誕生日の翌日に一緒に過ごしていた相手と知りながら、動じることなく深々と一礼してきたのだ。


「ご丁寧にありがとうございます」

 拓也が渡してきた名刺を受け取り、立花もまた名刺を返した。


「この焙じ茶も、とても香ばしくて美味しいですね」
「実は、職人が炭火手炒りした静岡の最高級茶葉を使っています。この焙じ茶をつかった新商品も考案中でして」

(大して茶の知識もないだろうに、違いが分かるような顔をするなんて、さすが大手の営業マン様)

 立花は穏やかに接しつつも、内心では悪態をつく。

< 131 / 146 >

この作品をシェア

pagetop