天満つる明けの明星を君に【完】
少し眠った後、まだ寝ている雛菊を置いてそっと床を出た天満は、先に朔の部屋に顔を出して居ないのを確認した後、居間で雪男と談笑していた息吹をちらちら見つつ縁側に居た朔の隣に座った。


「朔兄、あの赤飯の意味…分かりました」


「大体想像はつく。母様関係なんだろう?」


ひそひそと詳細を話した天満は、雪男との話が終わった頃合いを見計らって茶を飲んでいた息吹の前で正座した。


「母様、僕…謝りたいことがあります」


「うん、そう言うのを待ってました。雛ちゃんから聞いたんでしょ?」


「はい。でも母様、僕は雛ちゃんを絶対お嫁さんに貰うと決めてたんです。だから…」


「だからって私が昔から口を酸っぱくして言ってたことを守らなかった理由になるの?」


「あの…ごめんなさい…」


誰も母には逆らえない。

正座してうなだれる天満に助け舟をと朔が口を開きかけた時――とんでもない流れ矢が飛んできた。


「朔ちゃんもここに座って」


「え……はい…」


とんだとばっちりを食ってしまった朔は、隣に正座して舌をぺろっと出した天満を軽く睨んだ。


「朔ちゃんも私の知らないところで色々してるのは知ってるんだからね。十六夜さんに顔が似てるのはいいけど、女遊びするとこは似ちゃ駄目!」


「はい…ごめんなさい…」


――息吹から一生過去の女遊びについて詰られる運命の十六夜が苦い表情になる中、背中を丸めた兄弟ふたり、しゅん。


「でも天ちゃん、これで一人前になったんだからおめでとう。言っとくけど女遊びは駄目だよ。十六夜さんに似ちゃ駄…」


「…俺を引き合いに出すな」


「え?今誰かおかしなこと言わなかった?」


「……」


兄弟ふたりと、その父、しゅん。

息吹は勝ち誇って胸を反らし、雪男を爆笑させた。
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