天満つる明けの明星を君に【完】
護衛は雪男ひとりが居れば十分。

北の地へ百鬼夜行に向かうため、それなりの数の百鬼たちも一緒について来ていたが、部屋に上がるのを拒否して繁華街に繰り出していた。


「で、お前は覚えた遊びをやりたい放題というわけか」


「や…やりたい放題って…言葉が悪すぎるんだけど…」


かあっと頬が赤くなった天満に内心爆笑の朔と雪男だったが、一生懸命神妙な顔つきをして酒を口に運んだ。


「母様の言い分としては、祝言を挙げた後に子作り…というわけだが、俺は逆でも構わないと思っている。その様子だと先に子ができそうだな?」


「い、いや、それは分かりません。だけどそうだなあ…子ができたら雛ちゃんにとっての念願の家族だし…」


「まあどっちでもいいじゃん。先代だって息吹だって初孫の顔見たいだろうし、子作りに励めよな」


雪男に思い切り背中を叩かれて猫背になって痛がっていると、遅れてやって来た雛菊が息を切らしながら天満の隣に滑り込んで頭を下げた。


「ぬ、主さま!ご挨拶が遅れました!」


「いや、忙しそうだから仕方ない。元気そうだな」


朔ににこっと笑いかけられてついぽうっとなった雛菊の脇を結構な力で肘で突いた天満は、雛菊が来るまでの間に話していたことをもう一度話した。


「母様は春頃に一度帰って来て祝言を挙げてほしいんだって。大丈夫そう?」


「うん、みんなよく働いてくれてるし、番頭さんが居てくれれば数日は大丈夫だと思うよ」


そっか、と笑いかけた時――その噂の番頭が何か相談したいことがあったらしく、控えめに襖を少し開けて声をかけてきたため、天満が一旦離席した。

その隙に朔は雛菊の手に盃を持たせて、有無を言わさぬにっこり。


「ところで天満はどうだ?今まで女を知らなかったが、不満に思っていることは?」


「え!?え…えっと…とんでもないです…とてもその……や、やめて下さい!恥ずかしい!」


「まあまあ、俺たちはもう家族同然じゃないか。弟が不便な思いをさせてないか兄として心配なんだ。で、どうなんだ?」


雛菊は顔を真っ赤にしてぶるぶる首を振った。


「不満なんて!ありません!」


「それは良かった」


朔と雪男は顔を見合わせて、にたり。

酒の肴に事欠かず、飲みまくった。

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