天満つる明けの明星を君に【完】
天満が戻って来ると、芙蓉と柚葉がまだぐずぐず鼻を言わせていて上目遣いに腰を下ろして頭を下げた。


「ええと…泣かせるつもりじゃ…」


「ええ、分かっているけれど…でも早く雛菊さんが転生してくるといいわね」


早速膝に上がり込んで指を吸い始めた暁を抱きしめてやった天満は、今までの日々を思い出して思わず吹き出した。


「でも僕はなかなか独りになる時間がありませんでしたよ。朔兄がしょっちゅう遊びに来てくれたから」


「あー、主さまが時々朝帰りしてたのはそういうことだったのか。俺はてっきり女の所に行ってるのかと」


雪男のとんでもない発言に芙蓉が朔を睨み、朔がじろりと雪男を睨んでそこだけは訂正した。


「違う。お前もうそれ以上喋るな」


「ええと、あの…半分は僕の所に来てたと思います」


「半分以上だ」


焦って朔を庇うためさらに訂正を重ねようとした天満だったが、その時暁が大あくびをして腕に抱き着いてぐずり始めたため、顔を覗き込んだ。


「さすがにもう眠たいよね。どうする?今日は朔兄たちと一緒に…」


「あうぅ」


――暁は寝る直前不思議な行動を取る。

朔か自分か――どちらかを選んで一緒に寝る癖があり、今日はどうやら自分と一緒に寝るつもりのようだった。


「連れて行っていいぞ。お前と一緒に寝るとぐっすり眠るから安心だな」


「そうですね、夜泣きもほとんどしないし。じゃあ僕はこれで。長々と長い話を聞いてもらってありがとう」


天満が暁を抱いてにこっと微笑んで去ると、思わず芙蓉と柚葉がぽっとなって俯いた。


「暁は以前の記憶は持っていないのかしら」


「持っていないでしょうね。私たちは黙っていた方がいいと思います」


輝夜の提案に朔たちは頷き合った。

そして各々が部屋に戻り、天満の物語を改めて話し合った。
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