天満つる明けの明星を君に【完】

在りし日々を思う

「…という話でした。おしまい」


――話し終えたと同時になんだか胸のつかえが取れたような気になって晴れ晴れとした気分になった天満が皆を見回すと…


「うっ、う…っ」


「悲しい…悲しいお話でした…」


芙蓉と柚葉が号泣。

慌てた天満は思わず朔の袖を握ってぶんぶん揺らした。


「あ、あの…僕のせいじゃない…」


「お前のせいに決まってる。見ろ、夜が明けて次の夜が来てしまった」


はっとした天満は空を見上げてすでにとっぷり夜が更けているのを見てさらに慌てた。


「百鬼夜行が…」


「今日もぎんに代わってもらったから気にするな。天満、こうしてお前の思いを聞いたのははじめてじゃないか?」


「え、そうでしたっけ?ああそうか…僕なんだか自分の中で自己完結しちゃってたから」


未だ目を真っ赤にして鼻をぐずぐず言わせている芙蓉と柚葉になんと声をかければいいか分からなくなった天満は、膝に座ってご満悦の暁を朔に抱かせて腰を上げた。


「あ、あの、お酒が無くなったから僕取って来ますね」


「ん」


暁が不満そうな声を上げて天満に手を伸ばしたが、天満は暁に小さく手を振って台所に向かった。


「輝夜…訊いてもいいか?」


「ええ、兄さんが何を訊きたいのか分かっていますが、なんですか?」


朔は暁を見下ろして、小さな声で問うた。


「暁は…天満の……」


「…そうですね、そういうことになります」


「…えっ?暁はまさか…天満さんのむす…」


「先に天満の下へ転生してくるという存在…それが暁です。兄さん、今何を思っていますか?」


朔は少し悲しそうな声を上げている暁の頭を撫でると、なんとも言えない優しい微笑を浮かべた。


「ものすごく近いところに転生してきたな。天満は気付いていないが、暁に何かしらの縁を感じていたのは確かだし、暁もまた天満によく懐いている。後は…雛菊の転生を待つのみか?」


そうですね、と言って微笑んだ輝夜は、大量の酒を手にこちらに向かって来る天満を視界に捉えつつ、肩を竦めた。


「私にはまだ近しい未来が見えますが、まだなんとも言えません。ですがこの子が天満の心を癒してくれるでしょう」


芙蓉は何度も頷いた。

あのふたりは親子以上にすでに親子。

天満に全て任せよう、と思った。
< 287 / 292 >

この作品をシェア

pagetop