天満つる明けの明星を君に【完】
男として意識されていないんだから、自分は堂々としていればいい。

むしろまだ女を知らないということを知られてしまったら、それこそ恥ずかしくて今後雛菊の顔を見れないかもしれない――


「そ、そうだ、堂々としてればいいんだぞ、僕…」


髪を乱暴に拭いて風呂から上がった天満は、すでに布団を被っている雛菊を見て喉が鳴りそうになって慌てて咳ばらいをした。


「あ、お帰りなさい。天満様、灯りを消して下さい」


「え、でも…つけておいた方がいいんじゃないかな、うん…」


「眩しいから消してくれた方がいいの」


「あ…そう?じゃあ…」


灯りを消しても夜目が利くため見えるのだが、蝋燭の火を消した天満は横たわった雛菊の隣にすとんと腰を下ろしてちらっと雛菊を見た。

すると雛菊とばっちり目が合ってしまい、また動転。


「湯冷めするといけないから天満様も早く」


「あ、うん…失礼します…」


もうここは度胸を見せるべき時。

戦いの最中にあっては無敵を誇る天満でも、女に関してはからっきしで、のそのそと床に身体を横たえたものの…雛菊の手があたって即座に謝った。


「ごめん、触るつもりじゃ…」


「この床小さいもんね。ふふっ」


雛菊が急に笑ったため天満が目を瞬かせると、身体を横向きにして天満と向き合った。


「こうして誰かと寝るのなんて久しぶり」


「え…若旦那は?」


「旦那様は…忙しいから…」


「そっか。…あの雛ちゃん…申し訳ないんだけど…その…」


天満が顔を赤くしながらしどろもどろになったため、今度は雛菊が目を瞬かせていると――


「あの…胸元が……見えてます…」


手で顔を覆ってこれ以上凝視しないように努めた。
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