天満つる明けの明星を君に【完】
鬼族の女は豊満な身体つきの者が多い。

雛菊も着痩せしているように見えるが例に漏れず、胸も意外と大きくてはだけた胸元から見えていた。


「きゃっ!ご、ごめんなさい!」


「いいえ…お気になさらず…」


…女が苦手なのは分かるが、この反応――

雛菊は胸元をかき抱きながらもその小さな違和感を抱いて目を大きくして居心地悪そうにもぞもぞしている天満に問うた。


「天満様…もしかして…」


「え?」


「もしかして…女と付き合ったことがないとか…」


「…えっ、なんでそう思うの…」


「だって反応があまりにも初々しくて…まさか違うよね?天満様ほどいい男だったら付き合ったことがないとか、経験がないとかそんな馬鹿げたことないはず……え…そうなの?」


さらに顔を赤くした天満が布団を被ってしまうと、それが図星であったことが丸わかりで、じわじわ愛しさのようなものがこみ上げてきた。


「ふうん…そうなんだ…」


「…雛ちゃん今僕を馬鹿にしてるでしょ。口調で分かるからね!僕はその…まあ…そうなんだ。まだ未経験です。…おかしいと思うよね?」


「うん、おかしいと思う」


ずばっと切り付けられた気分になった天満が布団の中でまた顔を覆うと、雛菊も布団を被ってもそっと天満に身体を寄せた。


「天満様奥ゆかしすぎるもんね。…分かった!私、分かっちゃった!」


「な…何を?」


「天満様、私で慣れるといいよ。手を握ったり、だ…抱きしめられる位だったら私、平気だから」


「えっ!?駄目だよ雛ちゃんは所帯持ちだし、それは…」


「私はいいの。天満様のお役に立ちたいし、お願い。私に触ることで少しずつ女に慣れればきっとその問題も解決できると思うから」


――天満を心配するふりをしながら、触ってほしいと思っていた。

また天満もどこか心の中で雛菊に触れたいという思いがあったため――布団の中で至近距離にある雛菊を見つめた。


「そんなの…いいのかな」


「私がいいんだから、いいよ。でも旦那様や主さまたちには内緒にしてね」


「うん…分かった」


雛菊は天満の大きな手をそっと握った。

恥ずかしがる天満の顔を見てついむらむらして、冷静を装いながら天満の腕の中に転がり込んだ。
< 73 / 292 >

この作品をシェア

pagetop