人形の君に心をあげる。
「あの...」
老人は俺の顔をみて、出しかけたその言葉をつぐんだ。
怯えたように俺を見て、動きを止める。
「...」
きっと、ひどい顔をしているんだろう。
それは、老人の様子を見ればすぐにわかる。
「...話はもう、十分だ」
そう言って、老人を残して屋敷に戻る。
「まっ、待ってください」
後ろでおどおどした、弱弱しい声が聞こえてくる。
「今日からは...
ここがあなたの家です。」
「...」
俺はそれを黙って聞いていた。
「今日からは、私があなたの家族です。」
俺まで聞こえるように、声を張り上げる。
...今更、そんなもの必要ねえよ
俺は、一度も振り返らなかった。
「...しらねえよ」
独り言のように小さく吐き捨て、屋敷に入る。