略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
「た、匠海さん……っ、こんなとこ誰かに見られたら……っ」
「見られたら、付き合ってるって言えばいいよ」
「そんな……っ」
抵抗しようとする美郷の手首を掴んで、匠海は強引に顔を寄せてくる。
まだ匠海の熱を覚えている口唇が、震える。
「お願い、だめ……」
触れようとしたそこから抵抗を絞り出した。
いけないことをしているとわかるから。
自分がしていることは、きっと陽翔と同じだ。
婚約しているのに、他の人と親密な関係を持ってしまっている。
「婚約者に悪いとでも思ってる? 美郷にそんな苦しい思いさせてるのは向こうだろう。顔も合わせてないのに婚約って言葉で縛り付けて。
それに美郷は、俺のこと嫌だなんて少しも思ってない」
低い声が胸に響く。
どきどきと逸る鼓動に、匠海が言うように嫌な気持ちなんて少しもなかった。
後頭部を押さえられて、強引にも思えるキスを受ける。
けれど柔らかく食むられる感触は心地よくて、離れた口唇に名残惜しささえ感じてしまった。
「このまま連れて帰るから」
わずかにできた口唇の隙間で囁かれる。
美郷を抱き寄せたまま、匠海がどこかに電話をかけると、ほどなくして理子が美郷の荷物を持ってやって来た。
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