略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

 そして迎える師走。業務は一気に慌ただしさを増す。

 舞い込んでくる年末の新規や増資の受託処理におおわらわの美郷のほか、本店営業部にももちろん課せられているノルマの達成のために、本部長はじめ各課の役職者は文字通りあちこちに走り回っていた。

 【U&K証券】の営業戦略部長である匠海も同様で、毎日帰りが遅いことも美郷は把握していた。

 そんな慌ただしい時期でも、匠海との連絡は途切れることはなかった。

 続いていた日課に加え、初めて匠海の家で過ごしたときから毎週、休日は一緒にいるのが決まりのようになっていた。

 部屋を訪れるたびに、匠海は充電と称して美郷を抱きしめ、美郷もまた匠海のぬくもりが日頃の疲れの癒しになっていることを素直に受け入れていた。

 今年のクリスマスイブは休日で、一緒に過ごそうと約束をしたのが3日前の日曜日。

 あと一週間で年内の業務が終わろうかという忙しさがピークに達しているところで、束の間の休憩時間に理子が美郷に耳打ちをしてきた。
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