略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

 それに、美郷には陽翔とはまったく違う【結婚】に対しての理想がある。

 そしてそれを叶えてくれるのは、陽翔ではなく、匠海だ。


「姉貴も、陽翔と同じなのか……?」


 優花梨の発言に驚いたのは、美郷だけではなかったようだ。


「応援すると言ってくれたのは……」

「私達みたいに、どんな状況でも愛を貫けるほどの想いを持ってほしかったの。匠海に淋しい思いはさせたくなかったから」

「ごめん、姉貴。姉貴までそんな風に思ってるとは知らなかった。俺はそっち側の人間じゃないよ」


 気を落としたような声で、かぶりを振る匠海。

 その彼の苦しい心情が伝わって来て、思わず手を強く握り返していた。


「申し訳ありません、陽翔さんとの結婚は考えられません。両親にも祖父にもそう話すつもりでいます」


 匠海に寄り掛かってばかりはいられないと、美郷も自分の意思をしっかりと伝える。

 ショックを受ける両親の顔と、肩を落とす祖父の姿が目に浮かんだ。

 今まで何も反発などしてこなかった自分が、婚約を解消したいと申し出るにはきっと今以上に相当な勇気が要ることだ。
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