略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

「それで、匠海との結婚を申し出るか。じいさんが納得してくれればいいけどな」


 陽翔は優花梨の腰を抱き寄せながら、おかしそうに笑った。


「匠海。お前ももう30だよな? 年寄りたちがいい年したお前をいつまでも遊ばせておくと思うか?」


 綺麗な栗色の髪に頬ずりをする陽翔の口ぶりに、匠海が怪訝に眉をひそめる。


「名家のお嬢さんが数人、じいさんに面会に来てるの知らないだろう? 結城家から離れて独り暮らししてるんじゃあ、初耳だろうな」


 陽翔の言葉に、心臓が不吉な音でどくりと鳴った。

 さすがの美郷も、それがどういうことなのか検討はついた。


「お前の見合い相手、探してくれてるみたいだぞ? よかったな」


 意地悪に笑う陽翔の声が、耳に響く。

 ようやく自分の運命の相手が匠海だと気がついたのに、そう簡単に状況は変えられないとでも言われているようだ。


「だとしたらどうなんだよ。俺は家に振り回されたりしない。自分の結婚相手は自分で決める」


 力強い匠海の言葉に、真っ白になっていた頭が色を取り戻す。

 隣を見上げると、琥珀の瞳が揺らぐことなく真っ直ぐに陽翔を見据えていた。



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