略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
*

 小一時間ほどかけて街まで戻り、住宅に囲まれた一等地の中、辿り着いたのは結城の本家。

 歩いて一周するにも数分はかかりそうな塀が、ぐるりと敷地を囲っている。

 塀の向こうに見えるのは大きな日本家屋の屋根。

 隣接するガレージには、白や黒塗りの高級車が数台停められていて、財閥の位の高さを思い知らされるようだった。

 乙成家も小さい方ではないけれど、これは厳格な雰囲気と迫力の違いだ。

 まだ敷地の外なのにもかかわらず、すでに結城本家に圧倒されている。


「き、緊張してきました……」


 車から降り、匠海について行きながら、コートの上から飛び出てきそうな心臓を押さえた。


「ほぐしてやろうか?」

「え?」


 振り向いてきた匠海をきょとんと見上げると、ん、と目をつむった端正な顔が美郷にキスを求めていた。


「なっ、何してるんですか!?」

「え、緊張ほぐしてやろうかと思って、軽くキスを……」

「しませんよ! こんなところで!」

「ちぇ」


 そういうわりに、匠海は少しも残念そうではない。

 ぷいとそっぽを向いてみせても、楽しそうに美郷の手を引き寄せてくれた。
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