略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
思いがけない遭遇、そして変化
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 翌朝、マーガリンの溶け残ったトーストにかじりついたところで、テーブルの傍らに置いていたスマホがピロンと鳴った。

 こんな時間に誰だろうと思っていると、同じく向かいのテーブルに着く父がコーヒーに口を付けたままじろりと美郷を見やった。

 まさか父の前で、朝食を摂りながらスマホは開けないと、ごちそうさまをしてから洗面所に向かう途中で確認をする。

 明転させた画面には、【匠海】の文字。

 昨夜の尾を引く心臓はまた勝手に鼓動を速めた。


【おはよう、美郷ちゃん。俺のアカウント、承認お願い】


 電話番号だけでアカウント登録できるメッセージアプリに、匠海からのメッセージが届いていた。


【おはようございます。了解しました】


 美郷が返したメッセージは堅苦しい。

 砕けた返しなんて思いつかなかったし、あくまで取引先の部長にはこれが正解だと思った。

 すぐに既読をつける匠海は、丸っこい白くまがぱっと笑顔を華やがせたイラストを送ってくる。

 ピンクの頬をしていて予想外に可愛いくまだ。


 なんだか、匠海さんに似てる……


 ふふ、と笑ってしまった自分が洗面所の鏡に映る。

 ニヤけた顔をした自分に衝撃を受け、顔を赤くしながら歯ブラシを取った。



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