【短】あなたが優しく笑うから、心が激しく波打った。


 ずいぶん長居してしまった。さすがに昼を過ぎてしまうと両親に心配されてしまう。
 早朝に散歩に出て、それっきりだったもんね。さすがに連絡すればよかったかな。

 私はスマホを取り出す。



「え! 教えてくれるの?」

「違う!」



 至は途端に悲しそうな顔をする。
 ちょっと、意地悪すぎただろうか。良心が痛み出した。



「早朝に誰もいない海で、こうやって出会えて楽しかったよ」

「俺も最高に楽しい時間だった」



 私が言えば、至はすぐに笑顔で答えてくれる。



「至。運命とか、奇跡とかは信じないけど、もしも……また出会えたら。その時は、連絡先教える」



 しばらく海には行かない。テストも始まるし、部活もある。だから、彼にまた会えるのはいつになるかわからない。

 それでも、いつか出会えたら。
 その時、至がまだ私に興味あるようだったら。

 信じて、友達になってもいいかななんて思う。



「絶対に会う! 捜してでも会う!!」

「気合い入れすぎ」

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