【短】あなたが優しく笑うから、心が激しく波打った。


 嘘みたいだ。夢じゃないかと思う。
 勇気を出して謝っただけ。
 至があんなふうに笑うから、背中を押してくれるから、前向きになることが出来た。

 駄目だ、泣きそう。そんなことになったら、情緒不安定すぎる。落ち着け、落ち着け……。



「席に着いたか?」



 私は落ち着くため、担任の声に集中することにした。なぜだろう、担任が落ち着いてない。
 待って。担任が落ち着いてないとか何事なのよ。



「いいか! 落ち着いて聞けよ」



 そう言うあなたこそ落ち着いて。今は冷静になりたいんだから、少しくらい協力してよ。

 駄目だ。外の音に集中しよう。
 今日は何かおかしい。私、初めて同級生とまともに話をした。

 それだけで心臓がばくばくで、連絡先まで交換しようなんて言われて、私の中で何かが弾けてしまいそうだ。

< 17 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop