夏×シロ
いち
「________好き、だったよ」

そう言われたあの夏の日。

だった、"だった"んだって。私はやっと理想の人に会えたと思ったのに。

だって、私の理想はとっても高い。すごく高い。

高身長でイケメンで。優しくて勉強ができて、、ほら、ね?めっちゃ理想高い。

「__い!__!!」

あぁ、待ってよ私の理想の人。

「まっ、!__あれ」

飛び上がると目の前には怒った顔の担任。

「なんだぁ?日向。なーにが待って欲しいんだぁ?」

うっわぁ、これはすっごい"ヤバイ"っすね。

「い、いやぁー、先生おはようございますぅ」

顔を引き攣らせながら、怒りマークがついてそうな顔の先生を見て答える。

「_ったく、ちゃんと授業聞いてろよ?日向夏芽。」

「ごめんって!大丈夫!多分起きてるから!」

そう言うと周りからの笑い声と共に、先生がため息をひとつ落とし、黒板の前に戻って行った。

「もうー、夏芽のばーか!」

そう小声で言ってくる隣の席の私の友達、清水柚。

「ははは、ちょっと考え事してたらいつの間にか寝っちゃった」

私も小声でそう返す。

理想の人について考えてたなんて言ったら笑われそうだから本当のことは言わない。

そして、ほんと夏芽は馬鹿だなーなんて言って前を向いて、授業を聞く姿勢になった。


_チャイムが鳴る。


あぁ、やっと退屈な授業が終わったのか。

あーあ、もう放課後かー。今日はやることがないから暇だ。暇すぎる。

「なーつめ!今日はさ、私用事あるから一緒に帰れないの。ごめんね?」

顔の前で手を合わせ、そう言う柚。

「あぁ、おっけー、私のことは気にせず帰りな!」

ありがとう夏芽!と言い去っていく柚。

__さて、暇です。うん、帰るか。帰ろう。

荷物を持ち、歩き出す。

廊下に出ると、日差しが眩しすぎる。眩しすぎて目が眩んでしまいそうだ。

とぼとぼと廊下を歩いていくと、これから部活だろうか。スポーツバッグを持って体育館の方へ歩いていくいかにも体育会系の男子。

部活か、私も中学の頃には陸上部に入っていた。否、席を置いていたって感じだけど。

だって、ちゃんと部活に出ていたのなんてほんの数回、いや、1.2回ぐらい。そんなこと、はじめましての人に言った時には、"運動が出来る"ということを植え付けてしまう。だめだめ、そんな1.2回やっただけで、運動ができるだなんて思われたら困る。だって本当の私は全く運動なんて出来ないんだから。

__そんなこと考えてると下駄箱に着いた。

たくさんの生徒が行き交っている。こんなにこの学校の中に入れるんだ、と時々思ってしまう。すごいよね。学校ってさ。

まぁいいや、早く帰ろう。

そして、下駄箱から靴を取り出し、履き替える。

1歩また1歩と帰路に向かって歩いていく。

外に出るとより一層日差しが眩しい。逆光だからか前がよく見えない。


_ドンッ


そんな音とともに私は何かにぶつかってしまったことに気がつく。

「ごめんなさ__」

そう言い、上を見上げると、そこには顔が整っている男子生徒。

「ごめん、僕も前を見ていなくて。」

そんじょそこらにはいない珍しい声。とっても透き通っている声。聞き飽きない声。


「___いい声ですね」


咄嗟にそんな言葉が出てしまった。

いやいや、初対面の人に私何言っちゃってんの?頭大丈夫かな、私。

「え、あ、ありがとう_」

その男子生徒は少し頬を染めながら答える。

「あー、ごめん!いきなりこんなこと言って!気にしないで!」

ごめんの気持ちを手に表しながら全力で謝る。

「い、いや、いいよ。ありがとう。」

そう言ってその男子生徒は優しく笑う。

うっわぁ、顔整ってるから余計美しく見えるよ。なんだこれ、イケメンマジックかよ!

心の中でひとりコントをしていると、その男子生徒はまた、口を開いた。

「___君、なんて名前なの?学年は、同じみたいだけど」

男子生徒は、私のネクタイの色を見て同じ学年だと思ったのだろう。私の学校は学年でネクタイが統一されているから。ちなみに、私の学年は青。かっこいいよね。

「えっ、と、日向夏芽っていいます。えっとー、あなたの名前は...」

少し緊張しながら答える。だってこんなに整ってる顔の人と話すのなんて初めてだ。

「僕の名前は、小玉シロ。あ、シロって呼び捨てでいいよ。あと、クラスは1組だよ」

「あ、私は4組、です。」

「なるほどね、だから、会う機会がなかったんだ。」

顎に手をやりながら難しい顔をする小玉くん。

いやー、その姿もお美しい。

「君__あー、日向さんみたいな人、絶対友達になりたいからね」

と、笑いながら言ってくれる。

なんだそれ、超嬉しい。なに?私モテ期?__なわけないか。

「ははは、ありがとう。えっと、小玉くん。」

こんな人と恋愛がしてたら、昔の私は幸せだったろうか。

「今から帰るんだよね、良かったら連絡先交換しない?」

驚きの言葉だった。こんなやつがイケメンと連絡先を交換してくれる日が来るなんて!

私は"逆にいいんですか"と震え声で言うと、"日向さん、面白い人だからね"と多少馬鹿にされていそうな言葉をかけられたが、イケメンだから許す。この言葉を使う日が来るなんて思いもしなかった。

そして、小玉くんと連絡先をゲットすると、小玉くんはまたね、なんて言って手を振ってくれた。私も手を振り、嬉しさを胸に、帰路へと歩んで行った。
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