剣心一如!~「教えてやろうか?恋の仕方」─香取くんの恋愛指南は辛く厳しく、超絶甘い!?

 奴らが帰ってしまうと辺りは一気に静かになった。

 星宮と俺、ふたりきりの教室─


 普通こんな時、何て話し掛けるのが正解?


 俺はただノートを書き写す。

 かつかつとペンが走る音、グラウンドの運動部の声、それに、高鳴る鼓動だけが聞こえる。


(別にノートなんか取らなくてもいいんどけどな)


 星宮の視線を感じる。
 ノートを人質に拘束して、何やってんだろう、俺。


 普通こんな時、告白のチャンスなんだろう。


『星宮が好きなんだ』


 言ってしまえたらどんなにいいか─



 でも、知ってる。



「星宮、好きな奴いるの?」


「えっ…!?」


 星宮の頬が一気に紅潮する。

 可愛いな、なんて思うと同時に、これを染めてる奴に嫉妬する。


「あのっ…それはっ!た、多分そんなんじゃなくて!えーと…」

「ぷっ!」


 何そのしどろもどろ。可愛過ぎる。


「なぁ、そういうのってさ、恋愛し慣れてない感バレバレ」

「う…」


 無垢で清らかで。
 その瞳に映るのが俺だったら良かったのに…


「どうせお前、恋もしたことないんだろ?」


 俺だってそうだけど。

 でも女子たちが、俺がクラス1の美女だの年上の女だのと付き合って手馴れてる、なんてどこかで捻曲がった噂してるのも俺は知ってる。


「教えてやろうか?恋の仕方」


 成り行きだった。


「…え」

「好きな奴と上手くいきたいんだろ?」


 賭けだった。


「……」

「稽古、つけてやるよ」


 俺は机に手を突いてぐいと身を乗り出し、星宮の顔を覗き込む。


「どうする?」


 頼むから「はい」って言って…



「…よろしくお願いします」


 おずおずとそう答える星宮。


(マジかよ…)

 顔では平静を装うけど、正直俺が一番驚いてる…



 そんな風にして俺と星宮の『疑似交際』が始まった。


        *
< 117 / 131 >

この作品をシェア

pagetop