剣心一如!~「教えてやろうか?恋の仕方」─香取くんの恋愛指南は辛く厳しく、超絶甘い!?
 柔らかな感覚が下唇に触れる。

「あ…」

 咄嗟に俯きそうになるけど、香取くんの指が私の顎をしっかり支えて逃さない。


 そしてそのままぎゅっと唇を押し当てられる。身体中の力全部を唇に注ぐような圧力。
 それは、いつか少女漫画で見たような優しいとか、ロマンチックとか、そんな印象じゃなくて、不器用で無骨で、それでいてどこか純粋な感覚だった。


(キスって…こんな感じ、なんだ…?)


 香取くんの唇が更に熱を帯びて、深く口付ける。

「んんっ…」

 どう応えていいか分からなくて、ただ強く触れ合うまま、その体温だけを感じていた。


 そのままどれほどの時間が流れただろう。香取くんの唇がゆっくりと力を緩める。そして、幽かに触れるか触れないかまで離れたところで、もう一度押し付けられる。二度、三度…
 それから名残惜しむようにゆっくりゆっくりと離れる。

 私はそっと眼を開けた。眼の前にある香取くんの瞳が切なく煌めき、私を映していた。


「香取、くん…」

「……」


 瞳の中の私が、見るもの全てが揺らめき、霞む。
 気付くと私の頬を一条の涙が伝っていた。

 香取くんがまた小さく溜め息を吐く。


「…このくらいで泣くなって」

 私の顎に触れたままだった香取くんの親指が涙の雫をぐいと拭う。


「好きなヤツと付き合えてもこんなんで泣かれてたらあっさり愛想つかされるぞ」

「…ごめん」


 私の肩を掴んでいた香取くんの手が離れる。

 香取くんの顔は、少し眉間に皺を寄せて、何か苦しいような表情に見えた。


(なんでそんなに寂しそうな顔するの…?)


「…早く慣れて」


 そう言い残すと、香取くんは踵を返して元来た道を帰っていった。
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