王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


「薬物兵器ではありませんが、作ったのは私です」

 告げた瞬間、男性の纏う空気が張り詰めるのを肌で感じた。男性は私との一歩分の距離を詰めた。

「解毒剤は、何処にある?」
「解毒? そんなものはありません」

 告げた瞬間、男性の手が私の両腕をグッと掴んだ。その手の強さと熱さに慄く。

「其方! 其方は事の重大さを分かっているのか!? 其方の作った兵器が、一人の前途ある若者の視力を奪ったのだぞ!? 強引な誘いを掛けた事は確かに悪いだろう。だからといって、残りの人生を盲目の暗闇の中で過ごさねばならぬ程の罪か? 男は今も目や皮膚の痛みを訴えて、拘置所の床をのたうち回っている。これでは、ただの私刑と変わらん」

 強い口調は、けれど最後が少し、掠れていた。男性の怒り、やるせなさ、それらの感情がありありと伝わってくるようだった。




< 14 / 284 >

この作品をシェア

pagetop