王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
とはいえ、私の痴漢撃退スプレーにそこまでの効力はない。
「なんだと!?」
男性の目が、驚愕に見開かれる。
目や皮膚の症状は、せいぜい一時間ほどで落ち着く。目の前の男性は、その僅かな間に周辺情報を洗い出し、一縷の望みを賭けて、王都の軍施設を飛び出して私の元にやって来たのだ。
公正な思考、そしてそれを実行するだけの決断力と行動力、男の才をまざまざと見せ付けられた思いだった。
「おそらく、貴方が単騎で王都を飛び出してすぐに、その方の諸症状は落ち着いたはずです」
腕を掴んでいた男性の手が、力なくスルリと解かれる。
けれど男性の手が離れても、私の腕には男性の手のひらの温もりが残っていた。