王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
「フレデリック様!」
「フレデリック様、無事でございますか!」
かつて我が家に、これだけの大人数を収容した事などない。押しやられ、ビタリと扉に張り付いたまま、私は床が抜けやしないかと気が気じゃなかった。
しかも来訪者は、明らかにただの客ではない。押し入ってきた全員が全員、サントマルク王国軍第三師団所属を示す揃いの軍服を着用している。
そうして連呼される「フレデリック様」という名前。そうすれば、自ずと私が対峙していた人物の身許も知れる。
サントマルク王国軍第三師団は、いわゆる特殊捜査部隊。科学知識・捜査技術に精通する部隊で、今回のように謎の薬物が使用されたとなれば、真っ先に調査に動きそうである。
そんな第三師団を纏めるのは、王族に生まれながら自ら軍の門を叩き、いばらの道に飛び込んだ変わり者で、一切の忖度なしで師団長にまで登り詰めた、通称サントマルク王国の金狼殿下。