王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
人生は欲望だから







 腰の剣を携えて、無人の店内を抜ける。脇目も振らず、俺はスカーフが落とされた窓のある部屋を目指した。

「エミリーっ!!」

 そうして目にした瞬間、俺はエミリーに手を掛ける女を、渾身の力で蹴り飛ばしていた。力を加減するゆとりなど、この時の俺にはなかった。

 蹴られた女は衝撃で弾き飛ばされ、床上でもんどりうっていた。

 荒ぶる感情のまま剣を振りかぶらなかったのは、決して女を慮ったからではない。薄く開かれたままのエミリーの目に、降り注ぐ血しぶきを映す事を避けた。

 エミリーの瞳が、女の下賤な血で汚れる事を、本能で回避していた。

「ヒッ!」
「逃がすか!!」

 逃げようとする男を、後からやってきたミハルが拘束したのを、見ずとも気配で察した。






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