王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
悲痛な呻きを耳にすれば、胸が張り裂けそうだった。
「すまない。屋敷までしばらく、我慢してくれ」
エミリーが負った痛みを思えば、犯人を八つ裂きにしても足りない。
それでも今この瞬間、俺はエミリーが命を繋いだこの現実を、まだ見ぬ神に感謝せずにはいられなかった。
後一歩でも駆け付けるのが遅ければ、エミリーの瞳は確実にその輝きを失っていた。
俺が腕に抱き上げるのが、万が一にも、その目に色を失ったエミリーであったなら……。
想像すれば、それだけで恐怖の渦にぐずぐずと呑み込まれてしまいそうだった。
俺は、エミリーの温もりと重みを噛みしめるように、そっと、そおっと抱き締めて屋敷に向かった。
腕に伝わる命の温かさと脈動に、胸が歓喜で熱く震えた。