王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


 キィィイイイ――。


 エミリーを刺激せぬよう、扉をゆっくりと半分ほど押し開き、その隙間からそっと室内に身を滑らせる。案の定、エミリーは眠っていた。

 傍らに寄り添って見つめるエミリーは、しばらくはとても落ち着いていた。けれど夕刻から熱が上がり、少し早いかとも思ったが、あまりに辛そうな状況を見かね、マキロンから貰っていた熱さましを飲ませた。

 スゥっと熱が引き、健やかな寝息を立て始めたエミリーの姿に、俺は安堵の息を吐いた。ところが、一度は熱さましで下がった熱が、夜半過ぎに再び上がってしまった。どんどんと、熱は上がった。

 エミリーの状態は、当初俺が想像していたよりも、ずっと痛ましいものだった。俺は患部を冷やし、額の汗をぬぐい、氷枕を交換したりと忙しく介助をしながら、祈るような思いで一夜を明かした。



 けれど俺にとって更に予想外だったのは、夢うつつに呟かれるエミリーのうわ言だった。





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