王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


 けれど慌てて引かせようとしたその手が、次の瞬間にはフレデリック様の両手に包まれていた。

 その手のひらの大きさと、剣を握る厚い皮膚の感触に、鼓動が跳ねる。

「エミリー、其方の欲目のない、清らかな心根は美徳だ」

 唐突なフレデリック様の言動に、まるで理解が追いつかない。フレデリック様は、包み込んだ私の手を一度ギュッと握り込んでから、そっと解いた。

 私は半ば放心状態のまま、いまだフレデリック様の温もりを残す自分の手を見つめていた。そんな私の様子に、フレデリック様は笑みを深くした。

「ではなエミリー、世話になった」

 フレデリック様はそう言い残すと、ヒラリと愛馬に跨り、颯爽と駆けて行った。

 私は茫然と、駆けて行くフレデリック様のうしろ姿を見つめていた。その姿は段々と小さくなり、やがて見えなくなった。

 けれど私の目には、いつまでもフレデリック様の眩い微笑みの残像が残っていた。手も同様に、温かった。




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