Chinese lantern
「動物はのぅ、純粋故に人のようにややこしい輪廻という考えがない。迎えに行かずとも彷徨うこともないじゃろ? わざわざ迎えに行って送られないと輪廻の輪に入れぬ人とは違うのだよ」

「そうなんだ」

「やはり犬が一番多いの。犬は賢いし忠実じゃ」

 蛇が犬を使うなど変な感じ、と思うが、蛇神といえども卵は元・人なのだから、そう考えるとさほどおかしいことではないのかもしれない。
 蛇神としての力が十分になれば、護衛は必要ないのだし。

「わざわざ姿を変えてまで護衛役を務めていたのは、あ奴ぐらいよ。稀に人の護衛もあるがの、それはおぬしもさっき言うたように、ほんのひと時。ソラほど腕の立つ人も、そうおらぬ故、ほとんどすぐに悪鬼に食われるか、小さくなってお役御免じゃ」

「じゃあ何でソラは、姿が変わるの?」

 そういった特殊能力のある者なのだろうか。
 主様は少し考えつつ口を開いた。

「おそらく、わしが与えた蛇神の力が強かったのもあろうが、そうしないとおぬしを守れぬという気持ちが強かったのじゃろ。姿を変えるというのは結構な力を消耗する。まして奴は、それを爆発的に力を使う瞬間に放出しているのだから、負担は相当なものじゃろう。奴が回廊で迷子になったり池の水鏡が見えなかったりするのは、そのためよ」

「えっ。あれは蛇神故の力だから、わっちは迷ったりしないんだと思ってた」

「その辺に我らの力は必要ない。奴はおぬしに関わること以外の力が極端に弱い、というのかの。まぁソラの存在意義はおぬしを守ることじゃからの。自分がどうなろうといいのであろう」

 そんな想いまでしてソラは輝血を守っていたのか。

「だがその力も、もうないであろう。此度の護衛で、おそらく力を使い果たす。そのままソラは消滅しような」

 どきん、と輝血の胸が鳴った。
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