Chinese lantern
「ソラっ!!」

 いつもは悪鬼を倒したら、すぐに姿が戻るのに、そのまま大人の姿でいるソラに、輝血は駆け寄った。
 姿はあるが、身体全体を靄が包んでいるようだ。

『最期は元の姿か。主様も、なかなか粋なことをしてくれる』

 随分昔に聞いた、低い声でソラが言う。
 が、その声は今までとは違い、どこか遠くから聞こえてくるようだ。

 輝血は目の前の青年をまじまじと見た。
 今更ながら、こんな顔だったのか、とソラを眺める。

 取り立ててどうこう言える顔でもない、柳のように細い身体つきだ。
 今まで激しく動いている間しか大人の姿でなかったので気付かなかったが、この細さでよくあのような大立ち回りを演じられるものだ。
 剣客というのは、もっとがっしりしているものではないのだろうか。

『折角血みどろでもない姿で輝血に会えたってのに、身体は鍛えられないな』

 少し照れ臭そうに笑う。

「……お前、斬り死にだったはずだ。でもそれが死んだときの姿ってことは、痩せてたってことだな。何でそんなに痩せてんのに、剣の腕はあるんだ?」

 ソラの知識や剣の腕は、生前のものだ。
 生前強かったから、輝血の護衛も務まっている。
 主様も、ちょっといないほどの遣い手だ、と言っていたほどだ。

 だが目の前のソラは、そんな遣い手の身体つきではない。

『俺は労咳だったんだよ。剣はよくしたが、病には勝てん。まぁ病で死んだんじゃなく、斬り合いで死ねたってのは、剣客としては良かったよ』

 そうだったのか、と改めて輝血はソラを見た。
 輝血はソラのことを何も知らない。

 この姿をきちんと見たのも初めてだ。
 ソラはずっと、輝血のことだけを見ていたのに。
 そう思い、きゅ、と輝血は唇を噛んだ。
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