恋人未満のこじらせ愛
しかもちょうど遠くから江浪さんが出勤してくるのが見える。
何なんだこのタイミング。漫画や映画か?
江浪さんは一瞬私を見たかと思う、とすぐに目を反らした。
見なかったフリをしたいらしい。
そして何食わぬ顔で通り過ぎようとしていたが…六島さんががっちりと腕を掴んだ。

「江浪さん、おはようございます!」
またも目がギラッと輝き、獲物を捕獲したような不気味な笑み。
何というか、これじゃ『ヤンキーがカツアゲしてる構図』そのものではないか……。

「おはようござい、ます……どうしたの?」
明らかに『俺はこの子と接点無いし無関係だろ菅原さん助けて!』という心の声が聞こえてきている。


「江浪さん助けてください、私達危機なんです」

「は?」

「伊藤さんが日曜に会った時『何かあったらノリ君に何でも言いなさい』と言ってました」

「あ…うん?」

「……彼女に合コンできる男性を紹介してください」

「菅原ちゃんに誰か紹介したんなら、同期の私にも恵んでください!!」
相変わらず鋭い目付きのまま、ギーギーと言わんばかりに喚く六島さん。

とりあえず『日曜に会った時に』と『誰か紹介したんなら』で察してくれ江浪さん……と願い続けてプレッシャーをかける目線を送る。
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