恋人未満のこじらせ愛
結局それからは、ご飯を食べて映画を見て…更に部屋に連れてかれてDVDを見て……やっぱり底無し沼に溺れた。

どうしてもあの顔を前にすると─愛されたいと思ってしまう。あの腕の中に包まれたいと願ってしまう。


──一晩だけなら、夢を見させてもらえるから。



毎日ルーティーンワークで、やりがいはあるけど…代わり映えがなくて。特に目に見える不満があるわけでもなくて…
それでも学生時代のように、満たされた毎日ではなくて。
カラカラの乾いた心に、埋まらない一人の寂しさ。

一晩だけ、その足りなかったものが埋まっていく。

例えそこに愛がなくても。



結局金曜日の流れは、しばらくすると固定化された。
なぜか金曜日だけは仕事を早く終わらせて、大村先輩は待っている。そして私を連れていく。
連れて行かれた私は、一晩だけ夢を見る。

「愛してる」


いつも囁くその言葉は─いつもの夢のヒトコマだ。

その夢にすがりながら、また代わり映えのない毎日が始まる。
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