恋人未満のこじらせ愛
えっ…と少し動揺する。

「もう今日は上がりなんですか?」

「うん。じゃあ江浪また月曜」

そしてすたこらとエレベーターホールに歩いていく。
私はどうするべきなのかわからず、少し離れてエレベーターを待つ。

もういっそ逃げた方がいいのかそうだ誰かに連絡……

「携帯何使ってる?」
携帯を触っていたら唐突に大村先輩は振り向く。

「へ?iPhone………」

「見せて」

差し出す前に、持っていた携帯が奪われる。


「ちょっ……何してんですか?」
片手でタッチパネルを操作したかと思えば、私にすぐひょいと返す。

「ライン登録しといたから。大学ん時はまだ主流じゃなかったし」

「そうですけど……って………」
何を勝手にしてるんだと怒るよりも、あまりの速さにただ呆然。

「不便だろ?じゃぁ行くか」

そして到着したエレベーターに乗り込む。
いやそもそも行くか…って?

「どこに?」

「今ならレイトショー枠で…ってまだ時間あるな。メシ食うか。中華か和食どっちがいい?」

私に隙も与えず、大村先輩は畳み掛ける。
あぁこれはもう決定事項なんだな…。

「…………和食で」

そう言うと大村先輩は口角をキュッと上げて、私の頭をぐしゃっと撫でる。

「じゃあ行くか」

エレベーターが一階に到着すると私の手を取って歩き出す。
キョロキョロ見回して会社の人に見られてないか気が気ではなかったが、大村先輩は気にしてないみたいだ。

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