恋人未満のこじらせ愛
ふと見上げた石見君の顔は、本当に嬉しそうに口元が緩んでいる。
何かやっぱり、そういうところが可愛いなと思ってしまう。


ビルの出口を出ると、すぐそこがJRの改札だ。
「では送りますよ?改札まで」
石見君は改札方向を向いて促す。

このまま帰ってしまおうか。
そう思ったけれど…課長、いや智也さんの顔が頭をかすめる。

あの人はきっと待っている。
待っているから……放っておけないんだ。
行かなければ。


「いやいや!奢ってくれたし私が地下鉄まで送るから!」

「そんな…」
「これぐらいはさせて!ね?」

無理矢理押し切る形で、私はそこの地下鉄の入り口まで数十メートル歩く。
さすがに石見君も諦めてくれたようで、私の後ろを着いてきた。


「では明日、楽しみにしてます。連絡しますね」

手を振りながら、エスカレーターに吸い込まれていく姿を見送る。
私も見えなくなるまで手を振った。
< 96 / 170 >

この作品をシェア

pagetop