恋人未満のこじらせ愛
結局たどり着いたのは、近くにあったビジネスホテルの地下にあるバー。
お洒落な内装の、よく見かけるチェーン店。英国のPUBを倣ったお店だ。

週末の騒がしい店内で、壁側の並び席に腰掛ける。
カウンターにあるようなハイチェアで、足が床に着かずに座ってもなんだが落ち着かない。


ただ隣にいる智也さんは足が床についていて、それが余計に長い脚を目立たせている。
チラチラと振り返る人がいるぐらいの存在感。
何となく優越感…と、やっぱり少し心が掻き毟られるような、ヒリヒリとした感情が渦巻く。


二人でビールを頼み、のんびりとグラスを傾けた。
口数は少ないが、まぁよくあることだ。


「南條さんがさぁ」

ポツリ、ポツリと智也さんが話し始める。

「あれだけ一人で喋りまくってたのに、奥さんから電話がきて一気にテンション下がってた」

「結婚されてるんですね」

「あぁ。俺マジでびっくりしたわ……。尻に敷かれてるらしいぞ 」

「まぁ想像がつかないことはない」
奥さんの前ではビクビクしている姿が、何となく想像できてしまう。
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