三途の川のお茶屋さん


「なんだよ十夜、人の顔をジッと見て気持ちの悪い奴だな? 綺麗な女の視線なら満更でもないが、男に見られても嬉しくもなんともないぞ?」
「……懸人、お前は何者だ?」

便所を済ませ、戻ってきた懸人に問う。

「いきなり何を言うかと思えば。私はこの通り、しがない船頭だろう?」

何を馬鹿な事を、とでも言いたげに懸人はヒョイと肩を竦めて見せた。

「お前、神ではないのか?」

俺の突拍子もない問いかけに、懸人は目を見開いて、次いで白い歯を見せて破顔した。

「ははははっ! 私が神なら日に四往復のこんな重労働、早々に辞退を申し出ているさ」

……ふむ。それを言われてしまえば、返す言葉もない。

好き好んで手に肉刺作り、日がな一日の重労働に明け暮れたい神は稀だろう。神とは基本、頭脳労働者なのだ。



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