三途の川のお茶屋さん


動こうとしない十夜の腕を、タツ江さんが引いた。そうしてタツ江さんは、十夜の手に風呂敷包みを握らせると、ズンズンと戸口へ十夜を引っ張る。

「……ん? 随分とパンパンだな? 一体何が……」

十夜が店を出る直前で、立ち止まった。

「こ! これっ、十夜! 覗くでない!!」
「っ! 団子じゃないか!! タツ江婆! この団子は一体どうしたんですか!? まさか幸子の居ぬ間にくすねたんじゃないでしょうね!?」

! ……なるほど、厨房の団子の数が減っている。そして記憶を辿れば、タツ江さんは来た時、確かに手ぶらだった。

「十夜、私がタツ江さんにお土産にお渡ししたんです」
「……幸子」
「そ、そうじゃそうじゃ! ほれ十夜、いつまでもぐずぐず言っておらんと、行くぞ?」

私の出した助け舟に、タツ江さんがアイコンタクトで礼をよこした。顔をギュッと歪めて見せるあれは、おそらくウインクに違いない。

……なんだか、不思議と憎めない人だ。



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