三途の川のお茶屋さん
方々からの言祝ぎに、両親は微笑んで応えていた。
「よう女児を授かって下さった」
「これは目出度い」
皆が皆、私の誕生に喝采を送る。そこかしこに祝福が溢れていた。
けれど、そんな祝福の中に潜む、確かな敵愾心。
物心つかない赤ん坊でありながら、私だけが気付いてた。
父の長衣の後ろに身を隠し、怨嗟の篭った目で私を睨みつける存在を感じていた。
両親の温かな手が、優しい眼差しが、私だけに注がれていた。
父の長衣の裾を握り、唇を噛みしめる少年に目をとめる者は、私以外誰もいない。
少年は、私の兄。
あぁ、私はきっと、この兄に淘汰されるのだろう。それは確かな予感。この世で唯一同じ血を分け合った兄妹だからこそ、そう感じた。