三途の川のお茶屋さん


人の心は、一方向から見るだけが真実じゃない。どちらもが、懸人さんの真実だ。

「懸人さん、私、待っていますから。『ほほえみ茶屋』でまた、懸人さんとお茶を飲む日を待っています」

「ははっ、なに? 十夜に相談もなく、そんな重要な約束をしていいのかい? 三途の川の管理者は要職だけど、更なる出世を考えた時、神威様の膝元というには物理的にも少々遠いよ」

「懸人さん、そもそも十夜という人を読み違えています。十夜は一見すれば野心家にも見えそうだけど、私の知る十夜は権力やそれに伴う富名声には無頓着です。少なくとも十夜は、三途の川の管理者を、出世の足掛かりとは考えていません。……なのでもし、私が十夜の伴侶になったとしても、私は先の言葉通り、十夜と一緒に三途の川で、懸人さんに逢える日を待っています」

「……神に嘘は禁忌だよ? そもそも私が阿修羅の道からいつ戻るかだって分からない、いや、永劫に戻らないかもしれない」



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