三途の川のお茶屋さん
そうして難無く開店にこそ漕ぎつけたものの、この日の私はどこか平常心を欠いていた。常ならしない凡ミスばかりを連発し、数個の湯呑みと数枚の皿が犠牲になった。
けれど、それ以上にやっかいだったのは、十夜のカミングアウトが私の夢にまで多大な影響を及ぼすようになった事。この日を境に、私まで熱く情事に溺れる夢を見るようになった。
淫靡な夢は、私が目を逸らしたい現実を、容赦なく突き付ける。
……私が夢で抱き合う相手は、悟志さんじゃない。
熱くきつく私を胸に抱き締めて、吐息と共に甘やかに愛を囁く。深く優しい濃密な愛で私を翻弄するのはいつも、
……十夜だった。
「……ごめんなさい」
私は一体、何に対して謝るのか……。
意思とは無関係に展開される夢での情事、それは不貞とすら呼べないだろう。だけど私の心の奥深く、大事なところを占めるのは悟志さんだけじゃない。
悟志さんと同じ……いや、それ以上に十夜の存在が育ち始めてる。