三途の川のお茶屋さん




ガタッ、ガタガタガタッ!


『ほほえみ茶屋』の入口の引き戸が、物凄い勢いで押された。

『ほほえみ茶屋』の入口は、引き戸だ。なのにお客様は、押している!

「い、いらっしゃいませ!」

いくら押したって構造上、開かないものは開かない。どころか、乱暴にされて戸を壊されてしまっては堪らない。

私は大慌てで入口に向かい、自ら戸を引いてお客様を迎え入れた。

「っっ!!」

お客様を一目見て、私は衝撃で後ろに仰け反った。同時に納得、ヨーロッパ圏のカフェといったら普通、引き戸じゃない……。

「Hi,Are you open?」

暖簾を割った金髪、青目の異国の熟女が、ニコリと笑顔で流暢な英語を披露した。

「……イ、イ、イエスッ!」

ヒィ! 
私の内心の動揺はもう、推し量って然るべき。とにかく私は、アップアップだ。

「ど、どどどど、どうぞお席へ! ええっと、プリーズ テイク エニィ シート ……オッケイ!?」

ちっともオッケイじゃないカタコトの英語と身振り手振りで、金髪青目のお客様を席に通した。



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