Love season

「好きだからに決まってるでしょ!」

私は勢いで思わず口にしていた。

そんな私を真先輩は目を見開いて見ている。

「なんでだ......」

と言って私に彼は尋ねた。

そんな彼の頬を涙がつたっていく。

私は彼を優しく抱きしめた。

「私はどこにも行きません」

「え......」

「だから、私に彼女の面影を重ねるのはやめて下さい。私は彼女じゃないんですよ」

「お前はどうして俺のことを好きになったんだ。まだお前と話すようになって一ヶ月しか経ってないのに」

「人を好きになるのに時間って関係ありますか?」

「そ、それは......」

「それに私は一目惚れですから」

と言って真先輩から離れ、彼に微笑む。

「そうか」

真先輩はそう言うと涙を拭い私に微笑んだ。

「っ......」

心臓の音がうるさい。

「じゃあ行きましょうか」

私は心臓の音が届かないように真先輩に背を向け、歩き出そうとした。

すると「まて」と手を掴まれた。

「えっ?」

彼は私を手繰り寄せ、私の唇に優しくキスをした。

「返事してなかったから」

と真先輩は意地悪く笑った。

「な、何するんですか!」

私は慌てて真先輩から離れる。

そんな私を楽しそうに見ている。

「こ、今度こそ帰りますよ」

と私は歩き出した。

「まったく。なぁ桜、見てるか?俺、幸せになっていいかな?」

と真は小さく呟いた。

すると優しい風がそっと彼の髪を揺らした。

「ありがとう、桜」

真は振り返りそう言った。

彼には何が聞こえたのだろうか。

「真先輩、置いて行きますよ!」

「ったく、うるさいやつだ」

ため息をつき、真は愛しい人の方に走り出した。

「幸せになって、真」

と誰か優しく言った。
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