Love season

真実


いつのまにか中庭の桜の木も新緑に色づき、彼も中庭に来なくなった。

どうしたんだろう。

もしかしたら、もう学校には来てないのかも。

でも私には関係ない。

なんて言いながらも私は時々、中庭を訪れていた。

「春香、また中庭に行くの?」

「うん、あそこ静かで居心地がいいの」

私は昼休みにお弁当を食べ終え、再び中庭に来ていた。

しかし彼の姿はない。

もしかしたら、あの人に会うことはもうないのかも、なんて私は新緑に染まる桜の木を見上げていた。

「何やってんの?」

と後ろから聞いたことのない男の人の声。

振り返ると、そこには真先輩の姿があった。

今まで来てなかったのに。

「あ、ごめんなさい」

私はそう言って中庭を出て行こうとした。

「お前、入学式の日にこっち見てたやつだろ」

「え......」

「それにいつも教室からこっち見てるだろ」

な、なぜバレてる!?

こういう時ってなんて言えばいい?

見てましたって正直に言えばいいの?

それとも見てないですって言えばいいの?

私にはよくわからない。

「どうして俺のこと見て......」

「悲しそうだったから」

「は?」

「あなたが悲しそうにこの桜を見てたから」

それだけだったのに、なんであの時......

「お前、いつもここに来てるのか?」

「え、いえ、時々」

「そうか」

そう言うと真先輩は中庭を出て行った。

なんなの?

っていうか......

心臓が破裂するかと思った。

なんで、こんなにドキドキしてるの?

これってどうすれば.......
< 4 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop