御曹司は恋の音色にとらわれる
5つある席のうち3つは埋まっており、
その中で男性1人は1席だけだったので、
あそこだろうと検討をつける。

席を案内しようとする店主をやんわりと断り、
彼の元に向かう。

「こんばんは、五十嵐 拓(いがらし たく)さんですね」

彼ははっとなって立ち上がり、

「初めまして」と頭を下げる。

その姿だけで様になっており、
一流の営業マンか、上級社会に属する人物だと推測できた。

私が、「おかけ下さい」

そう言うと、私の席に手を差し伸べ、
私も座るよう促してくれる。
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