御曹司は恋の音色にとらわれる
「貴女の事が嫌い、嫌い、嫌い」

関をきったように、感情が溢れたようだった、
そう言って泣いて、座り込む。

私は「待ってて」といって、バスルームに向かい。
よそ行き用のタオルを持ってきた。

そのまま、万美さんに手渡す。

しばらく泣き続ける万美さんの肩をずっと撫でる。
しばらくして、ひくっ、ひくっと、しゃくる彼女の、
肩に手を置き、優しく語りかける。

「拓を支えてくれてありがとう、そして好きになってくれて」

そんな事を言われるとは思っていなかったのだろう、
万美さんが顔を上げる。

「やっぱり・・・拓様が好きになった人です・・・ね。
 どこか・・・結奈様と似ている」

確か結奈様とは、翔のお嫁さんで、天然人たらしの義姉。

「本当は分かっているんです・・・
 今の関係を崩したくなくて、告白すらしなかった私に、
 文句を言う資格はないって」
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