想い花をキミに
その視線に耐え切れずに目をそらそうとしたけど、彼がそれを許してはくれなかった。

私の頬を両手で掴むと、「逃げんなよ」って再びその熱い視線で見つめられたから、私の全ての気持ちが見透かされてしまいそうになる。

代わりに私は目をぎゅっとつむった。

「なんでだよ……」

悲しそうな彼の声が静かな室内に響く。

「何でなんだよ……なあ亜砂果!」

隼太が私を強く揺さぶった。

その時、私のポケットから隼太のお父さんに貰った名刺がひらりと床に舞い落ちた。

それを彼はすかさず拾うと、

「あ、」

急いでそれを奪おうと伸ばした私の腕をひらりとかわし、

「そういうことか。」と低い声を出した。

「人と会ってたって、俺の父親のことか。」

納得したように名刺からこちらへ視線を移す。

「親父に何を言われた?」と厳しい声で私を問い詰めてくる。

「特に……何も」

「嘘ついてんじゃねーよ。親父が何も言わない訳ないだろうが!」

自分でも嘘だと分かる嘘だった。
隼太はさらに私を問い詰めるように肩を掴む手に力を込めた。

「別れるように言われたんだろ。だから急に別れようなんて言い出したんだろ。じゃなきゃおかしいよ……だって俺たちあんなに──」

想い合ってたのに──

そう続けるかのように隼太はそこで口をつぐんだ。


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